慶應ラグビーへのいざない
はじめに
慶應ノーサイド倶楽部 代表 平澤光弘
2019年は、RWCで日本全体が盛り上がった年でした。多くの人々が、ラグビーの魅力に改めて目覚めました。それまであまりラグビーに関心のなかった人達が、何故急に、ラグビーの虜になったのでしょうか。いろいろな見方がありますが、ラグビーに縁のなかった友人が、RWCが終わって、ぼそっと「ラグビーって、いいもんだなあ」と、しみじみ呟きました。ラグビーの体現する価値観に目覚めたのだと思います。
それではラグビーの体現する価値観って何でしょう。
これまた色々な見方があるでしょうが、私は「自分自身に克つ」ということではないか、という気がします。
英国で生まれ育った競技には、自分自身を試すような要素があります。ゴルフ然り。谷に落ちたボールのライを直しても誰も見ていない。出来れば直したい。でもそんな自分に打ち克つ。ラックの中のボールに腕を伸ばせばマイボーに出来る。レフはブラインド。でもそんな自分に打ち克つ。
そして、言い訳をせずに、日々、身体とスキルを鍛えて試合に臨む。出来れば楽をしたい、その日常は誰も見ていない。けれど、そんな自分に打ち克つ。
現代社会は、少しでも良い結果を出そうとすることが求められ、人間の性として、結果のためなら手段に拘泥していられない。そして効率の美名の下に安易なプロセスが選択されがちになる。これはスポーツだけではなく、日々の仕事で、我々が直面する葛藤でしょう。
そんな今だからこそ、ラグビーのもつ「自分自身に克つ」という潔さが、RWCで、人々の心を動かしたのだと思います。
そして多くのチームが努力をする中で、ひときわストイックなラグビー・チーム。
それが、文字通り日本ラグビーのルーツである「慶應ラグビー」です。
慶應ラグビーを一言で表せば、「練習は不可能を可能にす。」(小泉信三)に極まると思います。
必ずしも素質やサイズに恵まれていなくとも、人一倍の努力で、不可能を可能にしていく。そんな奇跡は、いつも起こる訳ではありませんが、何年かに一度、信じられないような光輝く勝利の時が訪れます。だからこそ、慶應ラグビーを応援する者は、ある意味、最もラグビーの価値観に実直な、慶應ラグビーに心酔するのです。そしてこう呼びます。
「魂の慶應ラグビー」と。
