記憶に残る新人戦by 小倉 太郎

私の長くはない観戦暦の中で、忘れられない試合が3つあります。
一つ目は平成8年11月23日の早慶戦。
二つ目が平成12年1月15日の大学選手権決勝(関東学院戦)。
そして最後が、平成13年5月30日の新人慶明戦です。
おそらく、最後の試合はここを読んでいる方でも観戦されたのはあまりいらっしゃらないと思いますので、試合前の状況を踏まえて書きたいと思います。

慶応は怪我人が続出、現在の主力選手となっているHO猪口拓、SH岡健二、SO吉中宏弥らを欠いていました。新人で補えないポジションは上級生で穴を埋め、15人中5人が2年生以上という構成。対する明治は、入部時点で高校代表4名を含む代表候補まで含め9名の豪華な顔触れ。この試合には大分舞鶴勢の欠場などありましたが、それでも出場メンバー中代表候補以上の肩書きを持つ者7名(慶応は2年北村を含め3名)というメンバー。試合前は「これはかなり厳しい試合になるな」と思い、事実開始早々に先制の2トライを奪われたときは気分が沈みました。
ところが、ここから慶応が一気に攻勢に出ます。
SO堂原、CTB銅冶、WTB桐山らが次々とトライをあげていきます。
また上級生も元気で、CTB北村のランで次々とゲインラインを切ります。
明治ファンから「慶応の12番にやられっぱなしじゃないか」と言わしめました。
明治はスクラムで圧倒するも、その後のサイドアタックを谷、伊藤の両FLが低いタックルで何度も止めます。No8に入った高谷を含め、バックローのディフェンスがこの日の慶応の生命線でした。しかし、後半20分あたりから慶応のフィットネスが落ち、明治に連続トライを奪われ再度逆転されてしまいます。
そんな厳しい試合展開の中、慶応は粘り腰を見せます。
自身のタックルによるターンオーバーから連続攻撃、そして最後ステップを踏んでトライに結びつけたのはSO堂原でした。劇的な試合展開の末、38-32で勝利をもぎ取りました。

試合展開もさることながら、観戦して最も感動したのは、試合後に喜びを体全体で表現していた銅冶の姿でした。
「選手達の喜ぶ姿を出来るだけ多く見たい」
その想いが私の足を試合会場まで運ばせる原動力になっていると実感したときでした。

2001.5.30 @明治大八幡山グラウンド14:00 K.O.